金剛力士像 修復プロジェクト
経年による老朽化に伴い、山門の建替えと併せて、傷みの目立つ金剛力士像の修復を行う。
- 変更点:現在の彩色仕上げから木目を生かした木地仕上げへ変更。
- 目を水晶の玉眼へ変更。※これらの変更は、所有するお寺様の御意向により変更されます。
彩色の傷みと汚れが激しいので、洗いをしていきます。
※金剛力士像の全長は、2m10cm。
当時は、木材が貴重であった為、はめ木、埋め木を使って彫刻されているのが見て取れます。
時代は不明ですが、修理も入っているようで、割れ止めに、和紙を貼り膠と漆を混ぜたものを塗って固めてあります。また、鍛冶技術による和釘(わくぎ)が用いられていますが、これらは当時と言うより修理で使われたと考えるべきでしょう。今回の修復では、これら全てを取り除き木材だけにします。
木地仕上げにするので、余計なものは全て取り除かれます。各接合部分は点検を行い、密着性と強度を高めた組み付けをしていきます。また、欠損部分などは、仏師(仏像彫刻師)さんにより新たに作り直します。
彫刻師は、必ずどこかに自らの証しを残します。こうした機会にしか拝見できない貴重なものです。
- ①制作した年号:延享元 十月(西暦1744年、江戸時代)
- ②この仁王像を作った者
- ③制作者の所在地、氏名、年齢
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目を玉眼に変更するため、お顔を本体から切り離しました。
所有するお寺様のご希望により変更も行います。
目を玉眼に変更するため、お顔を本体から切り離しました。
所有するお寺様のご希望により変更も行います。
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組み付けが完了。
中和洗浄にて、染みや手垢などの汚れを落とし綺麗にします。
組み付けが完了。
中和洗浄にて、染みや手垢などの汚れを落とし綺麗にします。
十分に乾燥させてから色を入れていきます。木目の美しさを際立たせる為、厚手の布で擦り込んでいきます。擦り込んだら表面の木目が浮き出るように削りを入れて調整。この工程を繰返し行い木目を際立たせます。
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どこの木目をどう見せるか、どう際立たせるか。
頭部、胴回り、腕、腰周り、足と5つに分けて、バランスも考えながら擦り込み工程を行って行きます。
頭部、胴回り、腕、腰周り、足と5つに分けて、バランスも考えながら擦り込み工程を行って行きます。
耐久性を高める為に、擦り込み行程を徹底的に行いました。(計5回) 木目を際立たせながら、ここまでの深みのある色合いと艶を持たせました。 自然の明かりで最終点検。(大きさの比較、私の身長:1m77cm)後日、先方より玉眼を古色にして欲しいと言うご要望がありましたので、全体とのバランスに合わせました。
引き渡しの日、大勢の檀家様が待っておられました。建替えられた新しい山門に収めるため一旦、外でお披露目です。檀家様の歓声と共に、とても威厳のあるお姿だ。力強さを感じる。木目が綺麗。など、あちらこちらから聞こえて来ました。とても良い経験をさせていただき感謝です。仁王様、とても精悍なお姿に生まれ変わり1年2ヶ月ぶりに江原寺へ戻られました。 これにて金剛力士像、修復プロジェクト、完了です。